東京オフィス事情




COLUMN

スモールオフィスの新しい形〜Esq広尾

text=林厚見(東京R不動産)

東京オフィス事情で、以前募集したオフィス物件「Esq広尾」のプロジェクトストーリー。


2007年末に完成したオフィスビル「Esq広尾」。
写真:野秋達也

東京に山ほどある小規模のオフィスビル・・・そのほとんどはいたってツマラナイ、いわゆるペンシルビルだ。東京のように土地が高い街に新しく賃貸ビルを建てるとなると、よほど効率良くつくらないと経済的に成り立たないことは僕らもよくわかっている。でも、もうちょっと何とかならないの?と思う人は多いはず。

何しろ東京には「きちんとデザインされた賃貸オフィスビル」は本当に少ないし、小規模のビルに関しては、ほぼ皆無といっていいだろう。でも、創造的で元気のある会社が求めているのは、気持ちよく、楽しくて、カッコいいオフィスだ。個性と魅力のあるビルを建てた方がオーナーだって最後はトクをするはず。

そんなことを考えていた2年ほど前、広尾の外苑西通り沿いにある50坪の土地に賃貸ビルを建てたいという相談を受けた。

このオーナーはわかっていた。「目立つ場所にあるからこそ、現代的で街のランドマークになるような建築、そして入居するオフィステナントが誇りを持てるような空間にしたい」

場所柄もふまえ、感度の高い入居者の求めるものを探りつつ、建築設計を担当した(株)テレデザインが様々なアイディアを出しながら、オーナーも交えてプランが練られていった。事業プロデュースを担当した我々も、東京の小規模ロードサイドビルの新たなプロトタイプをつくるべく、効率や収益性と両立しうる空間価値、デザインについて議論した。


見えてきた新たなプロトタイプの条件

結果、今までのペンシルビルとは全く異なるいくつかの方向が見えてきた。

  • 20坪のオフィスフロアでは通常ありえない、約3mの天井高
  • 遠くまで抜けのある風景や光を取り込む大きな窓面と、各階にあるバルコニー
  • 外壁とガラスのジグザグの外観
  • オフィスの常識に反する、フローリング床
  • 最上階には光あふれるペントハウスとルーフテラス

工事が完成に近づき囲いがとれると「こういうオフィスをずっと探していた」という問合せが相次ぎ、周辺のビルより高い賃料にも関わらず、募集開始後ほどなく全フロアが満室となった。


1Fにはミラノのセレクトショップ“Al Bazar”が、2Fには現代彫刻ギャラリーが入居。
3〜6Fがオフィス。7〜8Fがホームオフィスタイプのペントハウス。
写真:野秋達也(左/右下)

ビジネスにポジティブなオフィス

いまや住宅では色々な物件が出てくるようになったけれど、オフィス物件はまだまだどれも同じようにつくられる。「個性」や「余裕」に価値を見出す人(企業)は随分いるというのに。気持ちいいオフィスにいることは、仕事の効率を上げ、発想も広がる。そしてクライアントへのプレゼンテーションにもなり、ビジネスにポジティブな効果が実際、あるのだ。そう考えてオフィススペースを探している人たちがたくさんいることを、今回改めて実感した。


写真:野秋達也(左)、Maris Mezulis(中央/右2点)

入居者に話を伺う

桜の季節が来た4月、最上階のオフィスに伺った。
ここの入居者は、建築、インテリアからグラフィック、ウェブまでデザインする株式会社モーメント

「気持ちよくて、想像力を喚起するようなオフィスを求めていた。1年以上かけて探していたんですよ」


デザイン会社 Momentの渡部智宏さん(左)と平綿久晃さん。

「確かに決して賃料は安くなかったし予算も上回った。でもオフィスとしての居住性や気持ちよさ、そして利便性やビルとしての構えや存在感も含めてバランスもよく、価値を感じました」

「やっぱりテラスがあることが何よりいい。お客さんにもすごく受けがいいし、気分を変えるスペースがないオフィスはつらいですよね」

オリジナルの真っ白なデスクや収納壁できれいにデザインされたスペースにMacが美しく並ぶ風景の中で、モーメントのメンバーは、余裕を楽しみながら仕事をしていた。


プロジェクトデータ
竣工2007年12月
事業企画・プロデュースSPEAC inc.
建築設計株式会社テレデザイン
事業主三橋興産株式会社
プロパティマネジメントリフィットマネジメント

※現在本物件には空室はありません。


写真:Maris Mezulis




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